個人事業主は収入が安定せず融資は受けにくくなります。さらにブラックという事になると、通常は融資してくれる金融機関はごく限られます。
しかもそれらのブラック対応業者にもやはり審査があり、返済能力が無ければ審査を通してくれません。
個人事業主の場合、借り入れが必要になるのは生活費にしろ事業資金にしろ事業が行き詰っている場合が多くなります。そこで融資を受ける前にしっかりした返済計画や事業計画が必要になることを説明します。
また融資してくれる業者が無く、融資を得るために怪しい業者の利用を選択する前に、行うべきことも説明しておきましょう。
個人事業主は借りにくい!ブラックの場合は一層厳しい
カードローンを考えてみると申込条件に必ず入っている項目が安定収入があることと言うものです。個人事業主の場合、どうしても収入は不安定になりますから、この条件が重荷になります。
またブラックの人の場合、金融機関は融資したお金の回収を疑うようになるため、銀行や大手消費者金融は審査には通さなくなっています。
この2つの理由でブラックの個人事業主という事になると、極めて借入れが難しくなります。
そもそも個人事業主は会社員と比べて融資は受けにくい
まずなぜ融資が必要なのかという背景は別にして、個人事業主の収支の受けやすさを考えてみましょう。
融資を受けるには審査に通らなければなりません。審査は金融機関の審査基準によって行われますが、大きく分けると次の3点で行われます。
- 本人の申込みであるか
- 返済能力はあるか
- 信用力はあるか
金融機関はお金を融資してその返済に合わせて受け取る利息を利益にしています。したがって返済能力の有無については大変気にしながら審査を行っています。
この返済能力の審査のベースになっているのが先ほど説明した安定収入という事です。要するにローンと言うのは月々一定の給料をもらっている人向けという暗黙の考え方があるわけです。
したがって、月々30万円づつ年間360万円の収入がある人と、入金日は一定していないが、やはり年間360万円の収入がある人を比べた場合、金融機関に好まれるのは前者という事になります。
このためローンの審査では職種によって審査に通りやすい場合と通りにくい場合が出てくる訳です。これは概ね次のように評価されます。
評価 | 職種 |
---|---|
高 | 公務員、正社員(会社員) |
中の上 | 契約社員、派遣社員 |
中の下 | 長期アルバイト、パート、個人事業主 |
低 | 年金生活者、専業主婦 |
極低 | 短期アルバイト、水商売 |
もちろん、個人事業主の場合事業の状況によっても評価は大きく変わりますから一概には言えませんが、概ね金融機関の見る目というのはこういったランキングになります。
したがって個人事業主は、会社員などと比べて融資が受けにくい状態にあるという事ができます。
ブラックの場合銀行や大手消費者金融は貸してくれない
次にブラックという状態を考えてみましょう。ブラックというのは今度は信用力に関わってくる問題です。
金融機関が信用力をどのように評価しているのかというと、銀行や消費者金融など各業界ごとに信用情報データベースというものを持っており、ここに記載されている内容で評価しています。
このデータベースの中にかつてローンの返済を滞納したというような情報が残っていた場合、その人の評価は低くなることになります。
情報によっては殆どの金融機関が審査に落とすような場合もあります。そういった情報を持っている人のことをブラックと言います。
以前はこのデータベースの中にブラックリストがあってその中に名前が載ると審査に通らないと言われ、それが元になってブラックと表現されていますが、実際にはこのようなブラックリストはありません。
あくまで記載内容をそれぞれの審査基準で審査して落としているという事です。
ブラックになる原因には次のようなものがあります。
原因 | ブラックの種類 | データベースに載る期間 |
---|---|---|
各種ローンの滞納 | 金融ブラック | 5年 |
各種支払いの遅延 | 金融ブラック | 5年 |
債務整理 | 金融ブラック | 10年 |
ローンの審査落ち | 申込ブラック | 6か月を超えない期間 |
このような情報がデータベースにある場合には、特に銀行や大手消費者金融のように厳格な審査を行う金融機関での借入れはまず無理という事になります。
個人事業主でブラックとなると非常に難しくなる
したがって、そもそも評価にハンデのある個人事業主である上にブラックという事になると、審査は非常に厳しくなることが分ると思います。
銀行や大手消費者金融でも個人事業主向けに月々の定期返済ではなく、任意に返済できるようなカードローンを用意しているところもあるのですが、ブラックという事になると、そういう場合でも審査には通りません。
融資を受けるためには、別のアプローチを考えなければならないわけです。
ブラック対応消費者金融がある!個人事業主は利用できるか?
最近になって消費者金融業界に増えてきたのが、たとえブラックであっても融資するブラック対応業者です。ただしこういった業者でもやはり審査があり審査落ちする可能性はあります。
こういった業者の審査は信用力については緩くするものの、返済されなければ儲けが出ませんから、返済能力については緩くはありません。
またこういった業者のほとんどは中小業者で非正規業者との見分けがつきにくく利用する場合には十分注意しなければなりません。
ブラック対応業者にも審査はある
ブラック対応というのは、銀行がカードローンの分野に進出し、多くの利用者がそちらに流れた上に、貸金業法の改正で消費者金融が儲けの出しにくい状況になってしまい、特に中小の消費者金融が生き残りをかけて利用者獲得のために打ち出してきたものです。
こういった業者は先ほど説明した審査内容のうち信用力の評価では大変緩くして、通常ならブラックという判断になる申込者でも信用力の審査を通過させています。
しかしながら、その他の審査は通常通りに行われるため、誰でも必ず審査に通るという保証があるわけではありません。
ブラック対応業者として有名になって、申込者が増えたが落とされる人の割合も増えてしまったという業者が時々ありますが、これはブラック対応をやめたという事ではなく、多くは信用力以外に問題があったという事です。
返済能力があることが融資の前提
ブラック対応業者でもっとも審査に影響するのは、やはり返済能力の審査という事になります。この返済能力の評価は、収入額にもよりますが、先ほど示した職種によるランキングも影響することになります。
したがって個人事業主の場合、ブラック対応業者であっても借りやすいとは言えません。十分準備をして申込まなければなりません。
ブラック対応の業者の場合、店舗自体は小さいですが、店舗に行けば融資を直接判断するような人が対応してくれる場合が多いため、融資が必要な場合には、自分の返済能力を的確に説明できる資料を示して説明してみましょう。
これらの資料としては自分の収入を示すものだけではなく、必要があれば、事業の安定性を示して、収入がいかに安定しているかを示すことも必要になるかもしれません。
正規業者を見極めて利用を検討しよう
このような業者を利用する場合に気を付けなければならないのが、いわゆる闇金です。ブラック対応業者は中小業者ですから、外見的には非正規業者である闇金となかなか見分けがつかないことがあります。
外見が比較的立派でも非正規業者ということは有ります。インターネット上のホームページなどは非正規業者のほうが立派だったりして、騙されてしまう人もいるほどです。
そこで中小の消費者金融を利用する場合には、金融庁の貸金業データベースを検索してみましょう。正規業者であればこのデータベースに必ず登録があります。
検索して登録情報が表示されても安心してはいけません。登録情報で次の情報が利用予定の業者のものと一致しているかも確認してください。
- 業者名
- 所在地
- 代表者名
- 登録番号
- 電話番号
闇金は実在している業者の情報のうち一部情報だけ入れ替えて、利用者を誘導しようとする手口を用いている可能性があります。十分注意して確認を怠らないようにしなければなりません。
安易に借りるのは止めよう!個人事業主の問題点
個人事業主の場合、金融機関が敬遠したくなる理由がもう一つあります。たとえば一般向けのカードローンの場合、説明書を読むと事業資金には利用できないことになっています。会社員なら切り分けは簡単ですが、個人事業主の場合そう簡単ではありません。
利用目的の切り分けが曖昧になっている場合が多いのです。生活資金にしろ事業資金にしろ融資が必要になるのは多くは事業がうまくいかず資金繰りに行き詰っている時です。金融機関が気にするのも無理はありません。
こういった問題があるため、もし融資を必要としたときには、どうすれば金融機関が納得するのかについて考えなければなりません。
利用目的が曖昧になりやすい
個人事業主にもいろいろとあって、大きな事業展開をしている場合には、事業資金と生活資金は別に管理するようになりますが、小規模になるほど、その境界が曖昧になってしまう傾向があります。
こうなってしまうと事業がうまくいっているのかどうかという見極めも付きにくく、金融機関が審査をする場合でも、融資すべき相手なのか、それとも危ない相手なのか判断が難しくなってしまいます。
こういう事も理由になって、金融機関での個人事業主の評価というものがなかなか上がらないともいえるでしょう。
ですから、個人事業を行っている人、あるいはこれから個人事業を計画している人は、金融機関とのおつきあいを前提にするのであれば、生活と事業をしっかり切り離してお金の管理を行うようにしてください。
借入れの申込みは事業が行き詰っている場合が多い
実は金融機関が個人事業主をなかなか信頼してくれない大きな理由はさらにこの先にあります。個人事業主が金融機関に融資を申し込む場合、生活費向けの融資であろうが、事業向けの融資であろうが、結局事業に行き詰っている場合が多いのです。
要するに直接的に事業資金が足りないから融資を申し込むか、事業資金にお金を回してしまって、自分の生活費が捻出できず生活費の融資を申込むかと言う違いにすぎないのです。
このためどういう形で融資を申し込んだとしても、金融機関は事業がうまくいっていないのではないかと疑います。このため個人事業主の審査は厳しくなるのです。
借入れ申込み前は事業計画・返済計画が重要になる
そこでこういった状況を打開して、融資を実現させるためには、金融機関を納得させるだけのデータを用意することが必要です。
ここで必要になるのは次の2つです。
- 事業計画書
- 返済計画書
まず収入源である事業の安定性、将来性を説明するものとして、事業計画を用意しましょう。事業資金として融資を受ける場合には当然用意しますが、生活資金の融資を受ける場合も、返済のもとになる事業がうまくいっていることを示すことは重要です。
曖昧な部分があるとその部分について必ず追究してきます。あらゆる方向から検討して具体的な計画を立ててください。もし自分の知識では無理だという場合には、外部の知識を使いましょう。
まず相談すべきは確定申告をお願いしている税理士さんです。資金繰りや事業の進め方など豊富な経験がありますから、申告だけをお願いするのではなく、大いに利用しなければもったいないのです。
税理士さんとの相談の中で、さらに別の知識が必要であれば、その都度紹介してもらいましょう。たとえば何らかのアイデアがあるのであれば特許の出願をすべきです。弁理士さんを紹介してもらいましょう。
特許があれば金融機関も一目置くことになります。そのように徐々に事業として必要な部分を埋めて行き完璧な計画に仕上げましょう。
次に、事業計画ができれば自分の収入も予想できるようになりますから、融資を受けたお金の返済計画を立てましょう。事業資金の中で借入れするのであれば事業計画に盛り込みます。
生活資金として融資を受けるのであれば、予想される収入から返済計画を立てます。収入と支出を予想して収支を計算します。収支から返済できるかどうかを判断して、返済できない場合には支出を見直し、返済できる計画に仕上げてください。
返済計画書の提出は要求されませんが、審査が危なそうな場合には、持って行って説明しましょう。根拠がはっきり示せれば印象は良くなるでしょう。
怪しい金融業者の利用は止めよう!泥沼にはまりかねない
いろいろと融資に必要な事項について説明しましたが、ここでのポイントであるブラックの個人事業主の場合、融資に至るのは大変難しいのは言うまでもありません。
どこも貸してくれなければ、事業を継続するために怪しい金融業者を頼るしか方法が無いと考えてしまうでしょう。しかしこういった業者は冷静に考えれば危険なことはすぐに分かります。
そこでそういった場合にとれる対応について考えていくことにしましょう。
どこも貸してくれなければ怪しい業者に頼るようになる
事業の運転資金に困るようなことになると、事業の継続が危ぶまれるため、個人事業主は生活の糧を失わないようにと、慌ててしまって藁をも縋る気持ちになります。
しかしこの状況になると、信用は大きく削がれていますので、中小の消費者金融も相手をしてくれなくなり、もはや相手をしてくれるのは闇金だけになってしまいます。
普通の精神状態であれば、闇金の利用が大変危険だということはすぐに判断できますが、藁をも縋る状態の人にとっては、もはや正常な判断ができなくなっています。
とにかく目先の危機を乗り切るため、どんな金融機関であろうと、融資に応じてくれるのであれば利用して乗り切ろうと考えるわけです。
その時点では、その後のことはその時になって考えればよいと思うのでしょうが、一度危ない業者の罠にはまってしまうと、それこそ事業継続の困難につながっていることは目に見えています。
ですからどういう状況に追い込まれたとしても、怪しい業者に近づいたり、誘惑に乗るようなことになっては絶対にいけません。
怪しい業者に頼る前に公的融資を検討しよう
そんなことは分かっていても、ではどうすれば良いのかという話になります。まずそういった場合にも頼りになるのはまず税理士さんでしょう。税理士さんなら、危ない業者ではなくどうやって事業資金を調達すれば良いのか一緒に考えてくれます。
これは個人事業で売り上げが落ちたりして事業が行き詰った時などに利用することができます。
利用するには条件もありますが、あぶない業者を利用する前に、税理士さんと相談して、こういった融資制度を利用して、苦境を乗り切ることを検討してみる価値はあります。
どうにもならな場合には債務整理も選択肢
相談して、もうどうしようもないと判断した場合には、怪しいところから無理して借りて、傷口を広げてしまうよりも、債務整理して一度リセットしてしまった方が後々を考えれば得策かもしれません。
もちろん例えば自己破産した場合、以後10年間は信用情報データベースに記録が残りますから、その間はお金を借りることは難しくなります。
しかし危ないところから借入れして、深みにはまった挙句、自己破産に至るよりも、ずっと良い判断です。
債務整理は最終手段ですが、時期は的確に判断して、人生をやり直したほうが良い場合もあるのです。
ここでブラックの個人事業主がお金を借りる方法と注意についてまとめておきます。
- 個人事業主は会社員などに比べて融資は受けにくく、ブラックとなると尚更難しくなる
- ブラック対応の消費者金融があるので、返済能力があれば利用できる可能性はある
- 個人事業主は生活資金と事業資金が曖昧で金融機関の信用を得にくいため事業計画などの準備が必要
- どこも融資してくれない場合でも怪しい業者ではなく公的融資制度などの利用を検討すべき
無理な借り入れは厳に慎み、返済の可能性を十分に検討してから融資を申込むようにしましょう。